打楽器とティンパニ
打楽器奏者が舞台上で音を出している時間は、多くの作品でごくわずかです。残りの時間は数えています。何十小節も休符を数え、正確にその一打を置く——打楽器の仕事の大半は、その待ち時間のほうにあります。そして置かれた一打は、たいてい曲の構造上もっとも重要な地点を示しています。
ティンパニは打楽器の中で別格
大小の釜型の太鼓で、他の多くの打楽器と違って明確な音の高さを持ちます。つまり和音に参加できる打楽器です。古典派の管弦楽ではトランペットと組み合わせて使われることが多く、両者で拍と和音の骨格を示す役割を担いました。演奏中に足元のペダルで音程を変えられる構造になっており、曲の途中で調を変える作品では、奏者は演奏しながら次の音程へ張り替えています。専任の奏者が置かれることが多く、その席は打楽器セクションの中でも独立した扱いを受けます。
音程を持たない打楽器
大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、タンブリン、銅鑼など。役割は大きく二つあり、ひとつは音楽を切る・打ち込むこと、もうひとつは色を足すことです。シンバルの一撃は音量の頂点を作りますが、同時に音の残り方——余韻を手で止めるか、鳴らしたままにするか——で場面の性格が変わります。トライアングルの小さな音が大編成の全奏の中でも聴こえるのは、他のどの楽器も持たない高い倍音を含んでいるからです。
一人が何種類も持ち替える
打楽器奏者は曲の中で複数の楽器を担当します。譜面には持ち替えの指示が書かれており、数小節の間に移動して次の楽器を構えることも珍しくありません。舞台の最後列で人が動いているのが見えたら、多くはこの持ち替えです。何を持ち替えるかを目で追うと、次に何が起きるかが少し先に分かります。
ハープと鍵盤楽器
厳密には打楽器ではありませんが、配置上その近くに置かれることが多いのがハープとチェレスタ、ピアノです。いずれも一台ないし二台で、独特の色を持つ音を全体に振りかけるように使われます。編成表でこれらの楽器を見つけたら、その作品にはきらめきを担当する層があるということです。
マレットの選択
ティンパニのばちは、芯の硬さと巻いてあるフェルトの厚みによって何種類も使い分けられます。柔らかいものは輪郭のぼやけた深い響きになり、硬いものは打点のはっきりした鋭い音になります。譜面に指定がある場合もありますが、多くは奏者の判断で、その日のホールの響きに合わせて選ばれます。同じ音符でも、どのばちを選ぶかで場面の性格が変わる——打楽器における音色の選択は、この道具選びから始まっています。
音を止めるという仕事
打楽器の多くは、鳴らすことと同じくらい止めることが重要です。シンバルや銅鑼は放っておけば長く鳴り続けるため、次の場面に響きを持ち越さないよう、手や身体で振動を抑えます。ティンパニも同様で、手のひらを膜に当てて余韻を切ります。演奏後に奏者が楽器へ手を伸ばしているのは、片付けではなく演奏の続きです。この止め方の精度が、曲の切れ味を決めます。
数え間違いが許されない構造
数十小節の休符を数えたあとの一打は、やり直しがききません。奏者は指揮を見ながら小節を数え、周囲の楽器の動きを手がかりに位置を確認しています。長い休符のあいだ、打楽器奏者が譜面と指揮者を交互に見ているのはこのためです。出番が少ない楽器ほど、その一音が構造上重要な地点に置かれているという逆説があります。
ティンパニの構造と奏法については、ティンパニの楽器学的な解説にまとめられています。全体の配置は楽器セクション入門を参照してください。
